断片小説 お遍路
田中は、四国八十八箇所の遍路道をユックリと歩いている。
春の花の匂いが漂う空気が、とてつもなく心地良い。

数ヶ月前、不況のあおりを受けて田中の経営する会社は、多額の負債を抱えたまま倒産した。
自己破産の手続きを済ませ、田中は今この遍路道を歩いている。
同じような会社を経営して倒産した親しい友人は、ホームレスをしているらしい。
また、もう一人の友人は一家心中を決行したという噂である。
同じ境遇を迎えてしまった友人たちは、全てをなくした以前に心が打ちひしがれている。
社会から阻害され地位も身分もなくしたと思った瞬間から、心がホームレスなのだ。

人間関係も無くなり地位も名誉も家族も無くした田中は思った。
「これは出家みたいなもんだな・・・」
自己破産手続きを終えた瞬間、田中の心の奥底でふつふつと湧き上がる感情があった。
それは「自由」という開放された感情だった。
田中が憧れて死ぬまで手に入れることは無いと思っていた「自由」という境遇。

今の田中は山頭火の気分である。
いや、気分だけは悟りを開いた禅僧のようでもあるかもしれない。
「菜の花咲くむこうに自由」
田中は、たいしたこともない俳句をひねり出し、山頭火気分の自分を苦笑した。
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