釣師と漁師
清らかな水が流れる渓谷の岸で、短パンとTシャツのラフないでたちの男が釣りをしていた。
清流はあくまでも清く透明だ。
Tシャツの男が釣り糸を流していると、いかにも釣師らしい衣服の男が隣近くによってきた。

「釣れますか?」
釣師がTシャツの男に言った。
「いや、まだです」
Tシャツの男が答えた。
「こいういう山奥の魚は警戒心が強いので釣りにくいでしょう」
釣師がもったいぶった風に言う。
「そんなもんですか・・・」
Tシャツの男が面倒そういに答えた。

釣師が釣り糸を川に投げ入れた。
とたんに1匹のヤマメが釣れた。
さほど大きくはないが、背中の黒い斑点が生き生きとしている。
釣師は自慢げに腰の魚篭にそのヤマメを入れ、また釣を続ける。
続けてもう1匹を釣る。
ニヤッとしてTシャツの男に声をかけた。
「釣りってのは、釣ろうとすると釣れんもんですよ!」
Tシャツの男は、川を見つめて答えようとしなかった。

釣師がまた続けて言った。
「魚が殺気を感じるんだよ・・・」
ふぅふぅふっ・・と小さく笑った。
しかし、2匹釣れた後は、いっこうに当たりがこない。

しばらくたったころ、Tシャツの男が大きなヤマメを釣り上げた。
黒々とした大きな斑点の生きの良いヤマメである。
さきほどの釣師の釣ったヤマメの3倍もあろうかと思われた。
続けてもう1匹、大きなヤマメを釣り上げたと思う間もなく、わずかな時間で3匹近くのヤマメを釣り上げてしまった。

面食らった釣師が、Tシャツの男に言った。
「あんた何ものです?」
Tシャツの男は、クーラーボックスのヤマメを数えながら言った。
「わたしは、この近所に住んでいる漁師です」

漁師は続けていった。
「魚は釣ろうとしないと釣れないよ!」
「殺気を見せつけ、魚を縮みあがらせるのさ!」
漁師は、先ほどの釣師の言葉の仕返しをして、ニヤッとして去っていった。

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