駅マニア

鉄道マニアといっても多種多様、色色な鉄オタが居る。
車両オタクが一般的ではあるが、駅マニア、駅弁マニア、線路マニア、車内販売の売り子さんの制服マニアというものまである。
私の場合は駅マニアといってもよいだろう。
駅は、どこか他の世界へと誘ってくれる出発点である。
駅を見ていると、別の世界別の暮らしが想像でき、それだけで旅行にいったような気分に浸れる。

線路も好きである。
幾何学的な線路の曲線はセクシーですらある。
いくつもの曲線が織り成す「鉄の芸術」といったならば、納得してもらえるだろうか。
車両に関しては子供の図鑑程度の知識しかないのであるが、嫌いというわけでもない。
金属の固まりでありながら、どこか生物的なその姿は、やはり魅力的ではある。

今日も今日とて、私はローカル線の駅を撮影に来ていた。
駅全体や運賃表まで撮影しながら、駅の風景を堪能していた。
ひなびたローカル線なので、駅には誰も居なかった。
駅構内に入って線路など撮影していると、どこから現れたのか白ずくめの男が私に近づいて来た。
たいそうに時代がかった白いシルクハットなど被っている。
男が私に向かって言った。
「あなたは次の列車に乗らなければなりません!」
唐突に意味不明なことを言う男に危険を感じて、私は少し後ずさりして言った。
「いや、僕は写真を撮っているだけなので、列車には乗りませんよ」
白い男が首を振って言う。
「いや、あなたは次の列車に乗る運命なのですよ」
感じの悪いその男に向かって、私は強く言った。
「車で帰るので、列車には乗らないよ!」
男はしつこく言う。
「次の列車は普通の列車ではありません、天国行きの列車なのです。あなたの寿命は本日終了します」

「あんた、頭が変なんじゃないのか?」
私は気味悪くなって言う。
白い男が、私に微笑んで言う。
「いいえ、私は天使なのです。
場所によっては死神とも呼ばれてますが・・・。
まぁ、名前なんぞどうでもいいことにして、今日はあなたを天国にお迎えに来たのです。
だれでも行けるという天国ではありませんよ、あなたは選ばれたのですよ。
ラッキーですね!」
私は不機嫌になって言い返した。
「ラッキーなもんかっ!天国だろうと地獄だろいうと死んでしまえば同じことよっ!」

そんな押し問答をしているさなか、突然見たことも無い種類の列車が、くだりの方角から線路の上に音もなく現れた。
骸骨のような男の手が、私の左腕をギュッと掴んで離そうとしない。
「さあっ!行きましょう!きらめく天国へっ!」
「いやだぁぁっ!!」
私は叫びながら、男を足で蹴飛ばし、ホームの下へ突き落とした。
その瞬間に、男の腕の肘から手までの半分が引き抜かれた様にちぎれて、私の腕に執念深く食い込んだまま気味悪く残った。
そして、一瞬に列車が男を吹っ飛ばし、列車はホームに停車した。
私は、残っている骸骨のような男の手を引き離し、思いっきり捨てようとしている。

「私の手、返してくださいよ・・・」
列車に吹き飛ばされたと思った白い男が、唐突に私の背後から言う。
「うわっ!・・・生きてたのか・・」
私は後ろを見ながら言う。
「もともと生きているわけではないので・・・」
男が薄ら笑いを浮かべながら言う。

私は捨てようとしていた男の手を返しながら言った。
「天国なんかに行くもんか!」
「そうですか、残念ですね。いい所なのに・・・」
白い男が、さも残念そうに言った。
そして続けて言う。
「この世で、散々苦労するより、天国で楽したほうがいいのに・・・
わかりませんねぇ・・・
せっかくのチャンスなのに・・・
もう50年間は、こんなチャンス巡ってきませんよぉ」
男が言うことなどを聞かない振りをして、私は列車のドアが音も無く開くのを眺めていた。

無言のままでいる私を凝視しながら、白い男は一礼をしながら開いたドアから列車に乗った。
そして、上りの方角へゆっくりと動き出すと、列車はじんわりと消えてしまった。

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