三毛猫古書店

三毛猫古書店は、先代の雄の三毛猫・ミケ之助から受け継いだ、虎猫の寅次郎が店主をしている。
寅次郎の飼い主が「男はつらいよ」の車寅次郎のファンだったので、その名前がついたのだ。
三毛猫古書店は年がら年中経営難で、いつ潰れてもおかしくないのだが、なぜか半世紀近くも続いている。
この古書店で一番高価な古書は、「解体新書」の写しである。
化け猫・ミケ之助の5代目昔の飼い主が、杉田玄白から解体新書の写しの以来を受け、そのまま手元に残ってしまった古書であるらしい。
時価数千万円とも言われているが、買い手はまだ見つからないようである。

三毛猫古書店は、昭和猫町2丁目の古い町並みにある小さな本屋であるが、化け猫界では結構名の知れた店である。
それは古書店としてではなく、旅人をタダで泊めてくれる、奇特な宿泊所として有名なのであった。
化け猫はもちろんのこと、狸や狐や河童や妖精、はては人間のヒッピー連中まで宿泊しに来る始末である。
そんな古書店なので、今日も三毛猫古書店は客にもならない連中で満杯だった。

「ところで、昨日帰っていったポン吉さんは、どこの化け猫だい」
狸のタヌ二郎が寅次郎に言った。
「え・・ポン吉さんは、人間のヒッピーだよ!」
寅次郎が言う。
「えぇぇ〜!人間だったの、とても人間には見えなかったよ!」
隣で聞いていた、狐のコン三郎が驚いていった。
「まぁ、人間といってもヒッピーなんぞ妖怪寄りの生物だからね!」
何か分からない生物の甚左衛門が笑って言った。
「甚左衛門さんも、どんな生き物か不明ですよね?」
狸のタヌ二郎が言う。
「うん、500年も生きてるが、自分が何物だかさっぱりわからん!」
甚左衛門が腕を組みながら言う。

「ごめんくださいよ!」
と、店先から声がした。
「お客さんだよ!」
と狐のコン三郎が寅次郎に言う。
「はいっ!いらっしゃいませ!」
寅次郎が金持ちの紳士のような風体の客にむかって、ていねいに言った。

「解体新書を買いたいんじゃが・・・」
そう言いながら、大きなバッグから、その紳士は札束をドンと出した。
「ここに3千万円ある、例の解体新書を売ってくれ!」
札束をチラつかせるように紳士が書棚を覗きこんでいる。
「例の解体新書ですね、わかりました!」
寅次郎は、そう言うと奥のほうの棚から、桐箱に入れてあった解体新書をとりだし、その紳士に渡した。
紳士が言った。
「うむぅ、これがあの解体新書か・・・売ってくれて、ありがとう」
紳士は寅次郎に3千万円を渡し、店を出て行った。

「すんごいね!!3千万円だよ!」
狸のタヌ二郎が仰天しながら言う。
「3千万円あれば、狐うどんが100杯は食べれるね!」
狐のコン三郎が言った。
寅次郎がまったく動揺せずに、平然と言った。
「あれは、木の葉のお金だよ!」

「ええぇぇぇ!!」
一同は声をそろえて言った。
「そんな木の葉のお金に、解体新書など渡していいのかい!」
甚左衛門が言う。
「大丈夫だよ!」
寅次郎が、茶をすすりながら言った。
「あの解体新書も、トイレットペーパーで作った偽者さっ!
あの紳士は、いつも来る、四丁目の狸のシガラキさんだよ。
お金持ちごっこをするのが趣味なんだ」

今日も三毛猫古書店は、賑やかだが儲からない。

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