オオサンショウウオ的生活のススメ

オオサンショウウオは夜行性なので、おきるのはゆうがたころです。
晴れた日の夕方には、きれいな夕焼けを見ながら眼を覚まします。
夜行性動物の朝は、夕焼けが朝焼けなのです。
オオサンショウウオのサン太郎は、今日も赤く染まった森や空を見ながら眼を覚ましました。
朝食は、サン太郎の家の岩の前を泳いでいる「ヤマメ」や「サワガニ」や「あゆ」などを食べます。
今日の朝食は「あゆ」でした。
朝ごはんを食べると、いつものように友だちの幻のニホンカワウソの川次郎の家に行きます。

川次郎の家は、サン太郎の家から泳いで直ぐのところにあって、流木と土とワラでできた家なのです。
天気は上々、風もさわやかに吹いてなんともいえないいい気分です。
夕焼けの雲は、赤くなったり黄色くなったり時々紫色になったり映画のようです。
「川次郎いるかい?」
サン太郎は、狭い居入り口を抜けながら言いました。
「いないウソ」
と声が聞こえました。
川次郎が「いない」といったときには「いる」という意味なのです。
幻のニホンカワウの川次郎は逆さ言葉の名人なのです。
そして言葉の最後に「ウソ」がつきます。
「好きだウソ」という言葉は「嫌い」ということです。
「食べないウソ」とうときは「食べる」という意味です。
馴れないとややこしくて訳がわからなくなってしまいますが、慣れるとどうってことはないのです。
「コーヒーでも飲みに行こうよ!」
サン太郎は、川次郎に言いました。
「いかないウソ」と、逆さ言葉で川次郎はいいました。

川次郎の家から、「喫茶・ホンドモモンガ」は歩いて10分くらいのところにあります。
喫茶・ホンドモモンガはホンドモモンガの桃花(ももか)さんが、大きな大きなブナの木のウロの中でやっている喫茶店です。
ホンドモモンガのやっている喫茶・ホンドモモンガ、そのまんまの名前でとてもわかりやすいのです。
ぶなの木のウロの中は広くて、いろんな野生動物たちの憩いの場所です。
サン太郎と川次郎は、たんぽぽコーヒーを注文しました。
喫茶・ホンドモモンガのメニューは、たんぽぽコーヒーや薬草茶や木苺のアイスクリームなど豊富ですが、お酒はだしません。
それは昔、さる酒をのんだニホンカモシカのおじさんとニホンツキノワグマのじいさまが、酔っぱらって大ゲンカになり危うくブナの木が倒れてしまいそうになったからです。
それ以来、お酒を出すのはこりごりなのです。

木の切り株のテーブルの上に、たんぽぽコーヒーを「はいどうぞ」と言いながら、桃花さんが運んできました。
香ばしいいい香りが、サン太郎と川次郎の鼻に漂ってきました。
一口飲むと、美味しコーヒーの味と香りが体中に元気を運んでくる感じです。
「う〜ん!たんぽぽコーヒーは最高だね!」
とサン太郎は言いました。
「うん、最低に不味いウソ!」
と逆さ言葉で川次郎も言いました。
コーヒーを飲みながら、音楽の話や昨日の天気の話などの世間話をするのです。

周りにはお客さんもいっぱいいて、それぞれに世間話をしながらコーヒーを飲んでいます。
酒も飲んでいないのに、いつも赤い顔をしているトキおじさんとか、ギョロリとした眼のシマフクロウじいさんとか、常連のお客さんがいます。
酒をのんで暴れたニホンカモシカのおじさんとニホンツキノワグマのじいさまもコーヒーを飲みながら仲よく世間話をしています。
サン太郎と川次郎は、こんな平和でのんびりした雰囲気が大好きなのです。
コーヒーを飲み終わると、音楽の練習に2人はゆきます。

実は、サン太郎と川次郎は音楽のバンドをくんでいるのです。
ジャンルは野生動物音楽です。
でも練習をするには、もう一人の仲間お呼びに行かなければなりません。
ツチノコのユーマくんが、もう一人のバンドのメンバーです。
ツチノコのユーマくんは未確認生物とよばれていますが、ここの動物仲間はみんな知っています。
喫茶・ホンドモモンガから歩いて30分くらいのところに、音楽の練習場の広い原っぱがあります。
その途中に、ユーマくんの家があるので寄ってさそって行きます。

「ユーマくん、いますか?」サン太郎は、ユーマくんの家の入り口でいいます。
「↑★●@▽%£≠>@↑⇒⊇(^^♪」
そう返事が聞こえました。
ユーマくんの言葉は、友だちのサン太郎や川次郎にしか理解できません。
発音をまねするのも一苦労します。
「音楽の練習にいくよ!」
サン太郎が言うと、
「∨∋∋〒※△£#(^_^)v」
とユーマくんは答えました。

音楽の練習場まで歩いていく途中には、ホタルが飛んでいたりヒカリゴケが生えていたりしてとても明るい道です。
ときどきブッポウソウの鳴き声やシマフクロウの話し声もしてきます。
木の上のほうをサァーッと飛んでゆくのは、ムササビの兄弟でした。
練習場に到着すると、楽器を作り始めます。
野生動物音楽の楽器は1回しかもちません。
だから演奏するごとに作らなければいけないのです。
ツチノコのユーマくんの担当はドラムです。
ドラムは、からになった木の実や穴の開いた切り株に、木の葉っぱを張って作ります。
サン太郎はギター担当ですが、このギターは野生動物用のギターなのでとても繊細です。
木の実に竹の枝をさし、太めの蜘蛛の糸で弦をはるのです。
蜘蛛の糸によって音が良くなったり悪くなったりするので、蜘蛛の糸を捜すのがけっこう大変なのです。
川次郎は、草笛担当です。
草笛の草の種類はなんでもかまいませんが、なるべく薄くてじょうぶなものがいい音が出るようです。
サン太郎は蜘蛛の糸を張り、川次郎は草の葉っぱを用意して、ユーマくんは木の実をいくつか並べます。

野生音楽会のはじまりです。
ズンチャカ♪♪♪♪♪♪ズンチャカ♪♪♪♪♪♪

サン太郎が蜘蛛の糸ギターを弾きます。
川次郎が草笛で美しいメロディーを吹きます。
ユーマくんが木の実のドラムを、ポコポコたたきます。
リズムはレゲイのリズムに似ています。
ズンチャカ♪♪♪♪♪♪ズンチャカ♪♪♪♪♪♪

音楽が、森や川や滝やけもの道に響きわたります。
ズンチャカ♪♪♪♪♪♪ズンチャカ♪♪♪♪♪♪

月明かりに照らされた野生動物楽団は、とても神秘的です。
ズンチャカ♪♪♪♪♪♪ズンチャカ♪♪♪♪♪♪

練習場の原っぱに、いろんな生き物が集まってきます。
ズンチャカ♪♪♪♪♪♪ズンチャカ♪♪♪♪♪♪

ニホンオオカミやコウノトリやツキノワグマやシラコバトもやってきます。
ズンチャカ♪♪♪♪♪♪ズンチャカ♪♪♪♪♪♪

オオムラサキやギフチョウやミヤマシロチョウのような虫たちも集まります。
ズンチャカ♪♪♪♪♪♪ズンチャカ♪♪♪♪♪♪

近くを流れる小川には、アユモドキやイタセンパラやハリヨやネコギギのような魚たちも集まってきます。
ズンチャカ♪♪♪♪♪♪ズンチャカ♪♪♪♪♪♪

音楽に合わせて、ダンスを踊る動物たちもいます。
ズンチャカ♪♪♪♪♪♪ズンチャカ♪♪♪♪♪♪

野生動物音楽会は何時間も続きます。
ズンチャカ♪♪♪♪♪♪ズンチャカ♪♪♪♪♪♪

月が雲に隠れたころ、今日の音楽会は終わりです。

サン太郎のギターの蜘蛛の糸はゆるくなったり切れたりして、もういい音はでません。
草笛葉っぱも、しおれてしまってもう音がでなくなりました。
ドラムの木の実はひびが入って響かなくなりました。
でも大丈夫、また明日楽器を作ればいいのです。
それが野生動物楽団のいいところ。

ちょっと汗もかいていい気分の3人は、山の温泉に行くことにしました。
山の温泉は、近くの山のふもとにある、アルカリ単純泉のくせのない気持ちのいい温泉です。
サン太郎や川次郎たちは、暇になるとかならず温泉にはいりにゆくのです。
山の温泉だけでなく、ブナ温泉や河童池温泉や山の山頂温泉など温泉がいっぱいあるのでサン太郎たちは幸せです。
月は雲にかくれてしまって道は暗いのですが、ときおり飛んでくるホタルが道を照らしてくれます。

温泉に到着した3人は、ザブンと湯船に浸かります。
温泉の温度は、冷たからず熱からずのちょうどいい湯加減で極楽です。
サン太郎の体は、ほかほかあったかくなってきて幸せな気分で満たされます。
「ぽはぁ〜・・ぷはぁ・・・」
と気持ちのいいため息をついてしまいました
「ああ・・きもちわるいウソ」
と逆さ言葉で川次郎もいいました。
「†♭‰≪≫∽∽∵∬∠⌒∂∇(#^.^#)(*^_^*)」
ユーマくんも、気持ちのいいためいきをつきました。
ゆっくりした心地よい時間が流れ、3人はときどきうとうとと居眠りもしてしまうほどです。

東の空がぼんやりと白くなってきました。
もうすぐ朝になります。
夜行性動物にとっては、朝が夜のおとずれなのです。
ゆっくりと朝の空が、きれいな朝焼けの朱色に染まっていきます。
「そろそろ、家に戻ろうか」
サン太郎がいいいます。
「帰らないウソ」
と逆さ言葉で川次郎が答えます。
「∀⊇¬∧∋⊇⇒⇒(T_T)/~~~」
ユーマくんもいいました。
朝焼けの赤い日光をうけながら、3人はもと来た道をもどっていきました。
でもまた、きょうの夕方には、朝食のさかなをたべ、喫茶・ホンドモモンガでたんぽぽコーヒを飲み、野生音楽会で楽しい時間をすごし、山の温泉に浸かって楽しい一日がはじまります。
それがオオサンショウウオの生活なのです。

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