昭和ラヂヲ倶楽部

日曜日の夕暮れ時になると、いい年こいたオッサン達が、その倶楽部にやってくる。
片手に酒瓶をぶらさげながら、いそいそと少年のような心持でやってくるのだ。

「それそろスイッチを入れるよ」
町の自称発明家の山田が、集まって居るみんなに言った。
「今の時間だと”フーテナニー69”が放送してる時間だね」
山田は、ラジオのダイヤルを慎重に微調整しながら言う。
「榊原ルミのファンなんだよ、俺!」
ワンカップ酒の蓋を開けながら、接骨院をやっている清水が言った。
「俺は、小川ローザの方が好きだね」
横から古本屋のオヤジの仲上が、ちゃちゃを入れる。
「フーテナニーに小川ローザはでてないだろぅ・・」
口でスルメの足をクチャクチャ噛みながら陶芸家の後藤が口を挟む。

山田の発明したラジオは、そんじょそこいらのラジオとは訳が違うのだ。
そのラジオは一種のタイムマシンであった。
昭和時代のラジオ番組の電波を受信できる、タイム・ラジオだったのだ。

「しかし、なんだね、山田もスンゴイもん発明したね!」
もう、少し酔っ払った公務員の中本が感心しながら、山田に言った。
「そうだろ、凄いもんなんだよ、このラジオは」
山田は自慢げに言った。
「そんな凄いラジオを前にして、酒飲みながら昭和を懐かしがってるだけなんだよな、俺たちって・・・」
売れない画家の伊集院が苦笑いしながら言う。
「そりゃそうだ!」
全員が笑いながら同意した。

「おっ!始まったよ」
誰かが言うと、一瞬緊張したような空気になった。
その古びたようなラジオからは、30数年以上前の放送を流し始めた。
「やっぱ、フォークはいいよ!」
伊集院が、しみじみ言う。
「そうだね、音楽はフォークだよね!」
山田も仲上もうなずきながら答える。

番組が終わる頃、清水が酔っ払った感じで言った。
「糸居五郎のオールナイトニッポンとか聞けんもんかね?」
「おおっ、いいねっ!」
全員が賛同する。
山田は、またダイヤルを微調整している。

「Go! Go! Go!!! And Go's On!! は〜い、僕、糸居五郎!」
ラジオから、今は無きDJの懐かしい声が響き渡る。
「うぅぅ・・なつかしなぁ・・・」
中本が泣き始めた。
「中本が泣き上戸になっちゃったよ・・」
仲上もウルウルしながら言う。
「あの頃は、よかったよなぁ・・・」
伊集院が、しみじみ言った。
「近頃の若いもんときたら・・・」
愚痴っぽく清水が言い始めた。
「俺たちも、昔は親父たちにそんな風に言われてたな」
山田がさえぎって言う。
「そうだな・・」
全員、しみじみした気分になっていた。
ラジオからは、懐かしいアメリカのロックが流れていた。

夜は深深と更けわたってわたっていくが、帰る者は一人もいない。

TOP
昭和青春画報
昭和怪人夜話
異世界千一夜
戯言エッセイ
岐阜ネタ
LINK
※誤字脱字アリマス!
TOP 昭和青春画報 昭和怪人夜話 異世界千一夜 戯言エッセイ 岐阜ネタ LINK
Copyright (C) SyouwaGahou. All Rights Reserved.