さるぼぼ王国奇譚

飛騨高山の古い町並みで有名な上三之町を少しはずれた細い路地裏に、その王国は存在した。
私が、その王国は発見したのは偶然以外の何物でもないが、たしかにさるぼぼ王国は存在する。
ルイさるぼぼ16世という大そうな名前の王様が統治している、王権神授説を政治の軸とした王国であった。
国王のルイさるぼぼ16世は専制君主であったが、人間の私には寛大で、客人としていつも歓迎してくれたのはありがたい。
一部の人間と取引はあるらしいのだが、多くの人間と交流があるわけではないようだ。
取引といったが、この王国の主たる国家財源は、あのさるぼぼの生産である。
しかも、さるぼぼである民衆を強制的に連行し、さるぼぼの人形として飛騨の土産物屋におろしているのである。
さるぼぼ国王の軍隊は強大で、それが専制君主の所以でもある。

さるぼぼの民の主食は、甘いお菓子の金平糖であるらしい。
らしいと書いたが、さるぼぼに口や眼があるわけではないので、どのように金平糖を食べているのか定かではない。
しかし、多くのさるぼぼ達が「主食は金平糖だ」と主張するのであるから事実なのだろう。

眼や口のないさるぼぼの表情をうかがうのは容易ではないのだが、慣れてくるとそんな顔の無いものにでも表情があることが分かってくる。
たしかにさるぼぼの表情たるもの微妙につきるのではあるが、それはそれで可愛いものである。

大多数の一般市民の身分であるところのさるぼぼは、ほとんどが赤い色をしている。
飛騨のみやげ物のさるぼぼが赤いのは、そのことが理由の一つでもあるのだろう。
貴族たちは銀色やラメの入ったキラキラした色である。
僧侶は黒、農民は黄色、騎士は青、商人は緑、などと身分によって色があるようだ。
国王の色は金色である。
しかもただの金色ではなく、発光してかのように燦然と輝く黄金色である。
国王の后の色は、国王ほどの輝きは無いが、やはり金色であった。

専制君主とはいうものの独裁政治である。
最近では、無理やり土産物屋に売られる民衆の不満も増大しているそうである。
また、貧困にあえぐ赤さるぼぼの前で、王妃が言った言葉。
「金平糖が無ければ、角砂糖をたべればいいじゃない?」
そんな無神経な王妃にも批判の声が高まっているようだ
とはいうものの、旅人である私にとっては、楽しいだけのさるぼぼ王国である。
飛騨観光に飽きたなら、さるぼぼ王国に寄って、さるぼぼと遊ぶのも一興である。


ある日、久しぶりに王国に行ってみた。
すると、さるぼぼ王国は、今までにないくらい活気に満ちていた。
聞くところによると、さるぼぼ革命が勃発し、ルイさるぼぼ16世は断頭台の露と消えたらしい。
哀れにも専制君主である国王は、ギロチンの刃に首をちょん切られてしまったらしいのだ。
政治は民主政治となり、大統領が投票で選ばれているようである。
私は酔狂にも大統領に「そのちょん切られたルイさるぼぼ16世の首と胴体をくれないか?」と問いただしてみた。
大統領はあっさりとこういった。
「いいですよ、持って行ってください、どうせなんの役にもたちませんから」

私は国王の首と胴体を糸で縫いつけ、もとのさるぼぼの形に戻してみた。
しかし国王は生き返るはずもなく、黄金色のさるぼぼ人形のままであった。
今、ルイさるぼぼ16世の亡き骸は、私の車のフロントガラスの前でユラユラ揺れながら余生を楽しんでいる。

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