昭和爆弾

「博士!とうとう完成しましたね!」
助手の加藤が敷島博士に興奮しながら言った。
「悲願だった昭和爆弾の完成だっ!」
敷島博士も興奮を抑えきれない様子で答えた。
「これで我々の昭和時代が復活するという仕組みですね!」
助手は昭和爆弾の計器類の調整をしながら言う。
「そうだっ!この爆弾で失われてしまった日本の昭和を取り戻すのだっ!」
博士がパソコンで素粒子の構成を再点検している。

昭和爆弾、それは平成の建造物を素粒子に還元し、もう一度昭和時代の物体に再構築してしまう、恐るべき爆弾であった。

「これで、あの忌々しい高層ビル群も、懐かしい昭和の文化住宅へと変身させてしまうぞ!」
少し笑いながら博士は、数値を再計算している。
「あの、古びた路地裏や駄菓子屋も復活するんですね」
助手がニヤニヤしながら言う。
「そうだ、古びた銭湯も寂れた商店街も息を吹き返し、日本の町は復活するのだ!」
博士が研究所の窓の外を指差しながら叫ぶ!
「あの、化学物質で薄汚れてしまった青い空も、昔のような果てしなく青い空へと変身させるのだ!」
「あっはっはっはっ・・!!!」
敷島博士と助手の加藤は、まるで漫画の主人公のように大声で笑った。

「思えば、苦節20年。長いようで短かった20年・・・」
「全財産を費やし、とうとうこの日が来たのだ!」
「もはや後戻りは出来ないぞ!」
博士が助手の顔を見ながら力強く言った。
「そうですね・・・これで苦労が報われます・・・」
助手が、うぅぅぅっと涙をこらえて言う。
「失敗は許されん・・・これ1発しかない爆弾だ・・・」
博士も涙ぐんで言った。

「慎重に慎重を重ねて作り上げた昭和爆弾だ!失敗などありえない!!」
博士が確信をこめて言う。
「そうです!必ず成功します!」
そう言いながら、助手の加藤は爆弾のスイッチを博士の目の前に差し出した。
「変身するのは無機物だけだ、人間は無傷のままだ、心配無用だ!」
博士が言う。
「そうですね、我々は日本を正しい方向へ導くのですね!」
助手が答える。

2人は涙で潤む目を擦りながら、パソコンのエンタ−キーを同時に押した。
ピカッと真白な閃光が輝いた瞬間、平成のビルや高速道路や車が素粒子に分解され、みるみる昭和の物件に再構築され変身していく。

「博士っ!成功です!見てくださいこの昭和の町をっ!!」
助手は興奮冷めやらない口調で、博士に叫んだ!
「・・・・・・・うむぅ・・・・・・・」
博士は無言のまま立ちつくしたままだ。
「博士・・・どうしたんですか?我々の計画は成功したんですよ!」
敷島博士の浮かない顔を見ながら、助手の加藤が聞きただす。
「・・・成功するにはしたが、再構成された昭和の町が新品のままだ・・・・」
博士は研究所の窓のはるか彼方を眺めながらつぶやいた。

そこに広がる昭和の町は、今出来たばかりの新品の家々が立ち並ぶ、誰も見たことも無いピカピカの昭和の町になっていた。

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