宇宙銭湯 松の湯

宇宙銭湯・松の湯は、浴場つきの旧式宇宙戦艦である。
和ープエンジンも昭和時代のものならば、転送装置もポンコツであった。
しかし、煙突のそびえる情緒あふれる宇宙船のデザインには、心引かれるものがあった。

西暦2300年、銀河の片隅の昭和星系に第三次惑星間銭湯戦争が勃発したのだ。
勢力は、昭和の旧式エンジンを搭載した昭和軍と、独裁者スパ王に支配された大型スパセンター系の最新式・平成宇宙銭湯戦艦軍団である。
この宇宙銭湯戦争は、もう50年以上続いているのであるが、最近は新たな勢力が台頭してきていた。
それは、秘湯系の原始力ワープエンジンを搭載した、秘湯温泉軍の台頭である。
秘湯温泉軍は、昭和銭湯軍に敵対していたが、最近和平条約の締結も噂になっている。
だが、昭和の銭湯軍と大型スパセンター軍との熾烈な戦いはまだ続いている。

宇宙銭湯・松の湯の艦長・松野為五郎は、メインデッキの番台に鎮座しながら言った。
「ここは昭和軍の領域である、ただちに撤退せよ!」
メインビューワーに映し出された大型スパセンター軍の敵船の艦長・スパ王が、せせら笑いながら言った。
「それがどうしたと言うんだね、娯楽施設も無い弱小戦艦が!しゃらくさい!」
大型スパセンター軍の宇宙戦艦には娯楽施設が搭載してあり、乗務員のご機嫌をとっている。

松の湯の艦長は言い返した。
「大型娯楽施設はないが、我々には卓球台とフルーツ牛乳があるぞ!」
その言葉に大型スパセンター軍の艦長・スパ王は、たじろいた。
「うむ・・・そのような旧式の秘密兵器を搭載していようとは・・・・うかつだった」
最新式の兵器には、大型スパセンター軍のフォースフィールドは強いのではあるが、旧式で原始的な兵器はフォースフィールドを突き破ってしまうのである。
「古きを訪ねて新しきを知るだ!」松野艦長は言った。
「わけのわからんことを・・・おぼえてろ!」
スパ王が悔し紛れに言い返し、そののまま大型スパセンター軍の宇宙戦艦は、松の湯に後ろを見せ、退却した。

技術主任の坂本三助は、艦長に言った。
「危ないところでしたね」
うなずきながら艦長が言う。
「卓球台といっても、もう使い物にならないくらい古びているし、フルーツ牛乳も実はコーヒー牛乳なんだからな」
「ハッタリが利きましたね」技術主任が言う。
「人生、みんなハッタリだって!」艦長が高らかに笑いながら言った。
「今回は、何事も無く無事に切り抜けたが、まだ危険が去ったわけではない、十分に警戒してくれ!」
艦長の松野為五郎は、乗組員全員に力強く訓示したのだった。

突然、銭湯全域に警戒警報が、けたたましく鳴り始めた。
「艦長!さっきの大型スパセンター軍が援軍をひきつれて、また攻撃してきます!」
「やはりな、あれで終わるとは思わんかったよ!」
艦長は番台から立ち上がり、若干あせっている。

メインビューワーに、敵艦の艦長・スパ王が映し出された。
「為五郎艦長、降伏しろ!これだけの多くの最新式宇宙銭湯にはかなうわけがないぞっ!」
不敵に笑う敵艦艦長・スパ王を尻目に、松野為五郎は言った。
「我々は、戦わずして降伏などしない!おぼえておけ!」
「これでもかな?」スパ王が新たな人物の映像を映し出した。
「どうだ、秘湯温泉軍のリーダーも我々の味方になったぞ!」
メインビューワーに移された秘湯温泉軍のリーダーの醒ヶ井門左衛門が言った。
「松野為五郎君、もう抵抗は無駄だ、ただちに降伏せよ!」
「あっ、門左衛門さん!裏切ったのですね・・・」
松野艦長が愕然として言った。

「裏切ったのではないよ、秘湯温泉も金しだいという訳なんでね」
秘湯温泉軍のリーダーが、親指と人差し指を丸くして言う。
「門左衛門さん・・秘湯は守らなければいけないと言っていたじゃないですか」
松野艦長が切り返して言う。
「所詮、秘湯などといっても客がこなけりゃ、ただの生暖かい水溜りにしかならないご時勢なんでなぁ!」
秘湯温泉の艦長が言った。

「秘湯温泉軍も我々と手を握ったぞ!観念したらどうだ、松野艦長!」スパ王がせきたてて言う。
「うむぅ・・・もはやこれまでか・・・」
松野艦長があきらめかけた、その時・・・!
敵味方にらみ合っている宇宙の彼方から、重要文化財級の超大型宇宙銭湯・富士の湯が現れた。
重要文化財級の超大型宇宙銭湯・富士の湯の側面には、富士山がペンキで気高く描かれてあり、敵味方を威圧した。

「この富士山金四郎が来たからには、この宇宙域での悪行は許さねぇぞっ!」
富士の湯・艦長・富士山金四郎は、敵艦の全員に啖呵を切ってみせた。
「金さん!グッドタイミングだぜっ!」松野艦長が言った。
「おうっ!いいってことよ!こちとら昭和っ子でい!不正なことは大嫌れいよっ!」
金四郎艦長がそう言うが早いか、敵船のエンジンにむかって富士山級の光子魚雷を数発浴びせかけた。

敵艦に光子魚雷が命中!
スパ王の軍団も秘湯温泉軍団も、蜘蛛の子を散らすように宇宙の彼方へ逃げ去っていった。

「金さん・・ありがとう、あぶないとこだったよぉ・・」
涙を浮かべながら言う松野艦長に向かって、富士山金四郎艦長が言う。
「お互い様よ!いつものとーり昭和の銭湯どうし助け合うのが情けっていうもんじゃないのかいっ!」
「そーだね・・あじがどぼ・・・」
松野艦長の言葉が、涙で濡れて言葉にならなかった。

宇宙銭湯・松の湯と富士の湯は、そのまま昭和星系にむかって進路をとったのだった。

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