有名税

ある日突然、斉藤のもとに「有名税務署」の職員と名乗る男がやってきた。
日曜日の昼下がり、マンションの一室に住んでいる斉藤の部屋のドアをノックしながら、そいつは現れた。

「有名税務署の職員ですが、あなたは斉藤勇次郎さんですね」
部屋の住人の男は、斉藤勇次郎という名前で俳優をしていた。
まだ売れ始めのタレントである。

「はいそうですが・・・」
斉藤は怪訝な顔で、ドアを開け答える。
「あなたは、俳優をやっておられますね」
税務署の職員は言う。
「はいそうですが」
斉藤は言う。
「最近、テレビなどに脇役で出てるでしょ、見ましたよ」
職員が言う。
「あぁ・・どうもありがとう・・」
斉藤が頭を掻きながら答える。

「ちょっと有名になりましたね」
職員が微笑みながら言う。
「有名ってほどじゃないですけどね」
斉藤が笑いながら答える。
「そんなことは無いですよ、もう日本の住民の1000人はあなたのことを知ってますよ」
1000人という具体的な人数を言われ、斉藤は変な感じになった。

続けて税務署員が言う。
「1000人以上の人が、あなたのことを知っているようになると有名税というものが発生します」
「この税金は累進課税方式で、有名になればなるほど税率がアップしていきます」
「ほら、毎日お昼時にテレビに出ているタレントさんがいるでしょ、あの人なんか税率が80%ですよ」
「6000万人くらいの人々の間で、名前が知れ渡っていますからねぇ」
「あっ・・・なぜ人数がわかるのかはお答えできません。国家機密ですから」
「あなたの税率は、まだ1%です」
「今日はその代金を頂に参りました」
税務署員が笑っていった。

斉藤は思った。
『これは新手の詐欺だな』
斉藤は黙ったまま職員をにらみ付けた。

「ああ・・私は詐欺師じゃありませんよ」
「なんだったら警察に電話してみたください」
「私たち有名税務署は超法規的組織ですので、日本の法律には適応されません」
「もし払っていただけなければ、あなたはまた無名のタレントに逆戻りですよ」

脅しなのか何だか分からないまま、斉藤は収入の1%を、その有名税務署員に渡した。
その後、斉藤勇次郎の税率はアップしてゆき、知名度もどんどんアップしていった。

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